株式会社SACCO様の学生さんによる学生向けインタビュー

社長ブログ

株式会社SACCOさんから、インタビューを受けたのは、昨年の11月29日でした。

インタビューの趣旨としては、以下の通りです。
業界を学生チームで調査研究し、レポートにまとめ、登録学生や動員学生などと共有するとのこと。学生から見た業界の様子や課題などをまとめ、大学専門教授のアドバイスも得ながら、レポート化するという企画です。
学生側にリアルな業界の様子を学生の視点でまとめ、伝えていくことで、より関心を高め、商業メディアによる情報以外に、より親和性がある情報を提供し、業界の課題を自ら解決していく意欲を学生側に醸成することを狙いとしています。
企業側は、課題感から共有することによる課題解決型人材への認知度向上が図れ、業界全体に対する理解の促進を図ることを目的としています。

私がお話しするのはやぶさかではないのですが、私では業界研究の参考にはならないことをお伝えして、それでも良ければということで、お受けさせていただきました。

1月22日にレポートを持参していただきました。
実によくまとめられていて、インタビュアーの久保田さんの能力の高さを改めて実感しました。

レポートを掲載します。

 

(株)Sacco 学生向け 業界特化レポート

 

「介護福祉業界 個別企業インタビュー」

株式会社ケアサークル恵愛

代表取締役 池田勇さん

 

(株)Sacco

介護福祉業界チーム

久保田健嗣

<はじめに>

ケアサークル恵愛は、1933年に設立された老舗の介護業者だ。事業内容は、訪問介護や認知症対応型共同生活介護など、介護サービス全般等を提供している。今回は、介護業界出身ではなく、ITのエンジニア出身という異色の経歴をもつ代表取締役池田勇さんにお話を伺った。

 

<介護業界への認識>

池田さんはまず、介護と一口に言っても細分化されている点を指摘してくださった。しかし、それでもやはり無視できないのは、3年に一度保険料見直しの機会があることだと語る。高齢者は多くなるが、国の財政は厳しくなる一方という構図は、見直しが重なってるごとに、事業者としては厳しい状況になってしまうのが、現状だと語ってくださった。

 

<自社のサービスとその戦略           ―会社の使命と社長の使命―>

介護提供者としては決して簡単な事業環境ではない中、池田さんは会社の使命は「在宅を支える」ことだと語る。それぞれの暮らしを、一人ひとり寄り添って支えるというこの使命は、国の方針である在宅支援ともリンクしている。在宅を支えるという使命を果たすために、ケアサークル恵愛は主に3つサービスを提供する。

 

1つ目は、「訪問介護」だ。これが、ケアサークル恵愛のメインサービスである。2つ目は、「グループホーム」だ。これは、介護認定がある認知症の高齢者の方が地域社会の中で、少人数で家庭的な雰囲気の中で支援を受けながら共同生活を営む家のことである。ケアサークル恵愛は、認知症をもつ方の増加を見越して品川区で初のグループホームを設立した。3つ目は、「ケアマネジャー」だ。これは、在宅で暮らしている人たちがどういうケアが必要かをプランニングし実行するものだ。この3つのサービスで、住み慣れた自宅でなるべく過ごしたいという人たちを支えている。

 

池田さんは前述したように、介護業界ではない業界の出身である。しかし、現会長から、会社を変えてくれという使命を言い渡され、社長に就任した。従業員の中からではなく、さらに業界にもこだわらず、人物本位で社長を選んだ会長に、並々ならぬ覚悟を感じるとともに、1933年創業とは思えないベンチャー気質を感じる。

そんな会長の想いを受けた池田さんは、最初にケアサークル恵愛を観察した結果、「ITの活用」と「全体の力を上げる」という二軸がこの会社には必要だという結論にたどり着いた。そこで、その二軸に沿った改革がスタートした。

 

まず、ITの活用だ。ITは、お互いを知ることの補助として活用し始めた。狙いは、情報共有の円滑化だ。と言うのも、ケアサークル恵愛には、日中働く人もいれば夜勤の人もいるので、リアルタイムでのコミュニケーションが難しい現実がある。そこで、グループウェア(※組織内のコンピュータネットワークを活用した情報共有のためのシステムソフトウェア)を導入してコミュニケーションの質を向上するようにしたのだ。

次に、全体の力を上げる取り組みとして、池田さんはスタッフ個人の力を上げることに取り組んだ。その中でも看板的な施策が「Good & New!」だ。Good & New!は気づきのレベルを上げるためのトレーニングであり、毎日、その日良かった、うれしかったことや新しい発見などをスタッフみんなに共有するというものだ。このGood & New!が、効果抜群だった。Good & New!によって、スタッフには良かった・新しかったことを「探し出す」意識ができ、さらに意識的に探していたのが、次第に無意識に探し出すようになり、気付きがルーティン化されたのだ。これにより、日常の観察眼が肥え、異常や変化にすぐ気づけるようになった。

事実、業務実績への効果として、それまで1か月平均5,6件あったなんらかの形の事故が、一か月で0件になり、今も0,1件ぐらいで推移しているのだ。社長もこの効果には驚いたが、スタッフ自身もその効果に「気づく」ことができたとのことだ。多くの良い結果をもたらしたGood & New!だが、その究極的な願いはスタッフ一人ひとりが、脳により残る深い感謝を自覚しやすくなることで、仕事のやりがいや働きがいをより増していくことだ。と言うのも、介護という頭では大切だと考えていることを、腹落ちさせてあげたいという池田さんの願いがあるのだ。

 

さらに、ケアサークル恵愛は、新規事業に取り組もうとしている。それは、「呼吸法」の事業だ。なんと、社長の池田さんご自身が呼吸法に関する資格を取得しており、呼吸法を広げていこうというのだ。呼吸法とは、マインドフルネスなどでも行われ、正しい呼吸を行うことで身体の不調を正すものである。日々私たちは、スマホを見ることによって体が前のめりになり、気道を圧迫している。そのため、ストレスを感じやすい状況になってしまっている。それを呼吸法によって解決しようというのがこの事業である。このように新規事業を立案し実行するのは、一つの事業だけでは経営が安定しないということがあげられる。そのため、経営の新しい柱として期待されている責任が重い呼吸法だが、なんと経営革新計画の承認も受けているのだ。経営革新計画とは、各都道府県が承認するものだが、承認率はわずかに10%という難関な審査なのだ。

 

また、これまでは高齢者がサービスのメインターゲットだったが、障がい者にフォーカスし、0歳から高齢者まで、様々なニーズに応えていきたいと池田さんは語る。だが、障がい者だからと言って、なんでもしてあげるのではなく、できることを取り上げないことを意識してサービスを提供していきたいと言う。これは、できることを取り上げてしまうと、できなくなってしまうという考えからだ。介護を提供する人は、時には利用者側にも努力が必要だが、いかにできることを引き出すかということを意識していきたいと話す。

 

<人材確保への想いと、学生へのメッセージ>

池田さんは、人材の確保は介護業界としても難しいところであり、ケアサークル恵愛自身も難しいところだが、自社として一つひとつ施策を打とうと考えていると話す。主に主婦の方向けとして、未経験・ブランクOKとし、さらに託児所を事務所の3階に設営した。その結果、一気に求人が殺到したとのことだ。まさに時代のニーズをくみ取った戦略と言える。また、外部のメンタルヘルス研修も実施し、従業員に寄り添った会社になることを目指している。

 

池田さんは、新卒もぜひ採用したいと語る。介護の仕事は、現場だけでなく、デスクワークが多いと言う。そのデスクワークを単調にやってしまうのでは誰でもできるが、膨大なデータがあるので、その分析をぜひ新卒にはやってほしいと池田さんは言う。

ケアサークル恵愛は、まだまだ発展途上の会社だからこそ、大学の知識を活かせるフィールドが広がっていると、池田さんは私たちに伝えてくださった。

さらに、池田さんに学生たちへのメッセージを伺った。自分が業務として新しいことにどんどん取り組んでいくと、自分も会社も成長し可能性も広がっていくが、新しいことや自分の想いを実行に移しにくい会社もあると言う。なので、その部分をぜひ見極めて自分の行く企業を決めてほしいと、池田さんは伝えてくださった。

 

また、Good & New!のときにも触れた働きがいの話とリンクして池田さんは、最近の働き方改革についてもご自身の考えを学生に伝えてくださった。池田さんは、働き方改革がはたらき「やすさ」ばかりに目がいってしまっていて、はたらき「がい」に目を向けられていないのではないかと感じるようだ。はたらきがいがなければ、時間が短くても意味が無く、「自分が何をしたいのか」そういうことを感じられる力をもって、束となって推進していくべきではないかと訴えてくださった。これは、私たち学生がこれから働くにあたって重要な示唆に富んでいると、そう強く感じた。

 

<おわりに>

池田さんは、インタビュアーが学生だからと言って軽んじることなく、かつ、難しい言葉や専門用語は理解しているかどうか都度確認してくださりつつ、論理的に、そして穏やかに話してくださった。

グループウェアによるコミュニケーションの質の向上や、Good & New!による事故数の劇的な改善、託児所の併設、経営革新計画の承認など、まさにレベルが高い経営を行っていると強く感じた。